◆ はじめに:体の不調とパフォーマンス低下、その鍵は「呼吸の質」
現代人の多くが抱える、なんとなく続く疲労感、慢性的な肩こりや腰痛、姿勢の崩れ、そしてトレーニング効果の伸び悩み
これら一見バラバラに見える不調の共通項として、実は「呼吸の質」が深く関わっていることがあります。
人は1日におよそ20,000回以上の呼吸を行っています。
この呼吸という動作には、単なる酸素の供給にとどまらず、以下のような多面的な役割があります
- 姿勢の維持(呼吸と体幹の連動)
- 自律神経の調整(交感・副交感のバランス)
- 体内圧(腹圧)を通じた関節安定性の確保
- 筋・筋膜の可動性や血流の促進
しかし、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、慢性的なストレス、運動不足といった現代的なライフスタイルによって、
多くの方が浅く・速く・胸ばかりが動く呼吸”=非効率な呼吸パターンに陥っています。
このような呼吸の乱れは、横隔膜の動きを制限し、体幹の深層筋(インナーユニット)の働きを妨げ、姿勢の崩れ・動作の不安定・疲労蓄積の原因となります。
呼吸の質が健康やパフォーマンスに与える影響、そしてその改善手法として有効な呼吸のトレーニング「ドローイン」と「ブレーシング」をご紹介します。
単なる「呼吸法」ではなく、「体を正しく使うための基礎づくり」として、今すぐに見直す価値があるのが呼吸です。
◆ 呼吸が整うと、体も整う
呼吸は、単に酸素を取り込むための行為ではありません。
正しい呼吸は、以下のようなメリットをもたらします。
- 姿勢の改善
- 肩こり・腰痛の軽減
- トレーニング効果の向上
- 疲労回復や睡眠の質向上
- 自律神経の安定
整体でも、呼吸が乱れている方ほど、姿勢や筋肉のバランスが崩れがちです。
そのため、呼吸は健康の土台であり、正しく整えることが、トレーニングや日常動作をより良くする第一歩になります。
◆ なぜ現代人は呼吸が浅くなっているのか?
現代社会では、多くの人が慢性的に浅い呼吸(胸式呼吸)になっている傾向があります。
その主な原因は以下のとおりです
- 長時間の座り仕事やスマホ姿勢
前かがみの姿勢が続くと、肋骨や横隔膜の動きが制限され、自然と胸式呼吸が習慣化します。 - ストレスや緊張の多い生活
精神的なストレスが続くと交感神経が優位になり、呼吸が速く浅くなりやすくなります。これは「戦う・逃げるモード」の生理反応の一部です。 - 運動不足による筋力低下
特に体幹深部(インナーマッスル)の筋力が低下していると、腹式呼吸がうまく使えず、胸や肩に頼った呼吸に偏りがちです。
このような生活習慣の積み重ねにより、呼吸の質が知らず知らずのうちに低下しているのです。
◆ 呼吸トレーニングの実践法:「ドローイン」と「ブレーシング」
ここからは、具体的な呼吸トレーニングを2つご紹介します。
どちらも体幹を安定させ、姿勢や動作を改善するうえで非常に効果的です。
- ドローイン(Draw-in):体幹の意識づけとインナーマッスル活性化
ドローインは、腹横筋という体幹のインナーマッスルを活性化させる呼吸法です。
主に「体幹の感覚を高める」「姿勢を整える」「腰痛予防」に効果的です。
▶︎ ドローインのやり方:
- 仰向けで寝る or 椅子に座った状態で姿勢を整える
- 鼻からゆっくり息を吸いながらお腹を軽くふくらませる
- 口から息を吐きながら、お腹をへこませるように意識(おへそを背骨に近づける感覚)
- その状態を5〜10秒キープし、自然呼吸で繰り返す
※腰や背中に力が入らないよう注意。呼吸を止めず、リラックスして行うのがコツです。
▶︎ ポイント:
- 腹筋運動では鍛えにくい「深層筋」を活性化
- 姿勢保持力を高めるベース作りに最適
- ブレーシング(Bracing):動きながら腹圧を高めるテクニック
ブレーシングは、腹圧(お腹の内圧)を高めて体幹を安定させる呼吸法です。
スクワットやデッドリフトなどのトレーニング時に特に重要です。
▶︎ ブレーシングのやり方:
- ドローインで腹筋の感覚をつかんでおく
- 鼻からしっかり息を吸い込み、お腹を前後左右360度にふくらませるイメージ
- 吐かずにそのまま、お腹全体に力を入れて腹圧を「押し広げる」ように固定
- その状態でトレーニング(例:スクワット)を行う
※腹筋を固めながらも、呼吸を止めずに自然に吐けるように練習するのが理想です。
▶︎ ブレーシングのメリット:
- 体幹の安定性が向上し、フォームが崩れにくくなる
- 腰や背中のケガ予防に有効
- 重い重量を扱うトレーニングでも安全性と効果を両立
◆ 整体と組み合わせるとさらに効果的
呼吸の浅さや左右差が姿勢や筋バランスの崩れに大きく関係していると考えています。
呼吸パターンを評価し、必要に応じて関節の可動性や筋膜の動きを調整することで、ドローインやブレーシングが行いやすくなります。
つまり、呼吸トレーニング × 整体の組み合わせは、より効率よくカラダを整える近道になります。
整体を受けた後にトレーニングを行うべき理由
ドローインやブレーシングといった呼吸トレーニングをより効果的に行うためには、「身体の可動性」や「神経系の活性」が重要です。ここで大きな役割を果たすのが整体です。
- 体の歪みや硬さが、正しい呼吸と動作を妨げる
現代人の多くは、長時間のデスクワークやスマホ姿勢により、胸郭(肋骨まわり)や股関節、背骨の動きが著しく制限されています。
これにより、横隔膜や腹横筋といった呼吸に重要な筋群がうまく働かず、ドローインやブレーシングが正しく行えないことが多々あります。
整体では、呼吸や姿勢の評価を行い、肋骨の可動性・骨盤の傾き・筋膜の緊張などを整えることで、体を「正しく動ける状態」にリセットします。
この状態で呼吸トレーニングや筋力トレーニングを行うことで、神経系の働きも高まり、運動学習(フォームの定着)や筋出力の向上が飛躍的に高まります。
- 整体 → 呼吸トレーニング の流れがベスト
たとえば整体で肩甲骨や肋骨まわりを緩めた後に呼吸を行うと、「こんなに息が入りやすかったのか」と驚かれる方が非常に多いです。
さらにその状態でブレーシングを行えば、これまで感じにくかった腹圧や体幹の安定感がしっかり得られるようになります。
この流れを定着させるために、整体とトレーニングはセットで取り組むことが望ましいのです。
◆ まとめ:呼吸を変えれば、体が変わる——まずは「意識すること」から
呼吸は、私たちが無意識に1日2万回以上も繰り返している動作です。
しかし、その“無意識のクセ”が姿勢の乱れや不調の原因となり、トレーニング効果を妨げているケースは少なくありません。
効率的に身体が変化する準備が整います。
呼吸を整えることは、特別な道具も、激しい運動も必要ありません。
今この瞬間から、誰でも始められる「カラダ改革の第一歩」です。